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奄美群島の自然

奄美群島の位置 奄美群島の成立
奄美群島の地史と生物相 亜熱帯性多雨林
奄美群島の多様な環境 奄美群島の貴重な固有種
人と自然の関わり 奄美群島の生物多様性の国際的評価

◆ 奄美群島の位置

奄美群島はユーラシア大陸の東端、日本列島の南端の南西諸島の一部を形成し、南北約200kmに及ぶ島嶼群である。

8つの有人島から成り、総面積は1,231km2である。奄美群島の西側、ユーラシア大陸との間には、世界屈指の強い暖流の「黒潮」が流れている。

 

 

 

 

 

 

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◆ 奄美群島の成立
奄美群島を含む南西諸島はユーラシアプレートとフィリピン海プレートの境界に位置し、1500万年前以降からの沖縄トラフの形成、地殻変動による隆起・沈降、170万年前以降からの気候変動による海水準の変動、サンゴ礁の発達に伴う琉球石灰岩の堆積で形成された。この間に、大陸との分離・結合を繰り返している。その結果、山地や河川が多い「高島(こうとう)」と、サンゴ礁由来の石灰岩で形成され地下水系の発達した「低島(ていとう)」の2種類の島が成立した。

 

 

 

 

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◆ 奄美群島の地史と生物相

1500年前
1500 万年前:
奄美群島は、日本南部から東南アジアまで連なる広大な陸地東端であり、この当時は、大陸のアマミノクロウサギやイボイモリの祖先種、また、東南アジアと共通のケナガネズミやトゲネズミの祖先種などが、奄美群島にも分布していたと考えられる。

 

 

 

 

 

 

 




 

200 万年前:
沖縄トラフの著しい沈降が始まり、内海(現在の東シナ海)が形成され、奄美群島の島嶼化が進んだ。この時代以前に大陸の東端へ分布を拡大していた生物は島嶼(高島)内にとり残され、大陸からの隔離が成立したと考えられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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◆ 亜熱帯性多雨林

一般的に、亜熱帯地域は温量指数(1 年のうち、月平均気温5℃以上の月の平均気温から5℃を引いた数値の合計)が180~240 の間に分布し、熱帯の高緯度側の南緯・北緯20~30 度の間に位置する地域が含まれる。世界の亜熱帯地域は中緯度乾燥帯に相当し、降水量が少ないため、森林は少なく、草原や乾燥帯となっている地域が多い。

奄美群島は温量指数から亜熱帯地域に属するが、モンスーン気候がもたらす年間2,000mm 以上の多量の降雨により、世界の亜熱帯域の中でも限られた地域(中米の高山など)にしか成立しない亜熱帯性多雨林が成立している。また、奄美大島や徳之島の山地の山頂部(湯湾岳694m、井之川岳645m)には熱帯では約1,000m 以上の高標高地に発達する雲霧林的な森林が成立している。

温度環境と降水量の分布
朝日百科「植物の世界」13巻.植物の生態地理(1997)を一部改変 図版作成:堀田満


 

 

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◆ 奄美群島の多様な環境

奄美群島は、島毎に異なる地形形成過程を反映して、山がちな「高島」と隆起サンゴ礁由来の平坦な「低島」に分類される。「高島」では、亜熱帯性多雨林、河口域のマングローブ林が発達している。「低島」では、隆起サンゴ礁段丘や石灰岩カルスト地形が発達している。各島の海岸には亜熱帯要素の海岸植生が、海中にはサンゴ礁が発達している。

このように、奄美群島では、亜熱帯の多様な景観要素が小規模な島嶼内に凝縮して見られ、また、島毎の自然景観要素の違いが明瞭に見られる。同時に、これらの自然環境が、希少種・固有種の生息基盤を提供し、群島内の生物多様性を支えている

 

【高島の島】
山がちで亜熱帯性多雨林、河口域のマングローブ林が発達大陸と陸続きの時代があり、固有種が多い。
 

・徳之島
生きた化石の棲む島
    ・奄美大島
亜熱帯多雨林が広がる島
 
亜熱帯多雨林
モンスーンの多雨により、世界の亜熱帯地域の中でもまれな亜熱帯性多雨林が成立しており、固有種の主要な生息・生育場所となっている。
 

マングローブ林
奄美大島の住用川河口などで見られる。小規模ながら、種多様性は高く、絶滅危惧種も多く生息している。

 

 

 

 

【低島の島】
サンゴ礁由来の石灰岩が隆起した平坦な島。河川が無く、鍾乳洞などの地下水脈が発達。

 
  ・与論島
堡礁に囲まれたサンゴの島

・沖永良部島
洞窟に富んだカルストの島

・喜界島
世界有数の速度で隆起する島

 

石灰岩カルスト地形

隆起サンゴ礁由来の低島では鍾乳洞が発達している。中でも沖永良部島に多く100km2もない島に150 もの洞口があると言われている。

 

隆起サンゴ礁段丘

喜界島の百之台は年間2mm もの速さで隆起しており、その速さは世界有数。十数万年前には海面にあったと見られており、近年の気候変動などの研究分野で世界的に重要視されている。

  【沿岸域の環境】
 

熱帯要素の海岸林
ソテツ、アダン、クサトベラ、ガジュマル、アコウ等の亜熱帯性植物が見られる。島の人々の生活との関わりも強い。

 
サンゴ礁
全ての島でサンゴ礁が見られるが、黒潮の流れによってよく発達している場所は約220 種もの造礁サンゴが分布している。

 

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◆ 奄美群島の貴重な固有種

【この群島の価値を高めている遺存固有種】

奄美群島には、世界中でここだけに見られる固有種が多い。特に、他の地域から隔離された歴史が長いため、日本本土やユーラシア大陸の大部分ではすでに絶滅し、奄美群島だけに残った「遺存固有種」がいくつも見られる。これらの中には、IUCN (国際自然保護連合)のレッドリストに掲載された国際的希少種が多く含まれている。例えば、一属一種のアマミノクロウサギは近縁の種が見当たらない。また、ルリカケスも日本本土や台湾には近縁種が分布せず、遠く離れたヒマラヤに最も近縁の種が生息する。

【島嶼間の種分化過程を表す新しい固有亜種もある】

奄美群島では、今でも、日本本土や、南西諸島の島々と共通に分布している種の分化が進んでいる。例えば、コキクガシラコウモリは、種として日本本土と共通に分布するが、南西諸島のものは固有亜種オリイコキクガシラコウモリに分化している。また、南西諸島の島嶼間で分化が進んでいる種として、クロイワトカゲモドキがある。これは南西諸島遺存固有種であるが、その中で5亜種に分化しており、徳之島には固有亜種のオビトカゲモドキが生息している。

掲載されている種の説明等についてはこちらのページもご覧ください。
(PDF形式)

 



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◆ 人と自然の関わり

奄美群島の伝統的な生活の周りには様々な動植物が見られる。人々は、古くから自然を利用しながら暮らしており、その利用は、普段の衣・食・住のみならず、伝統的な地域文化や産業と多岐に渉っている。

  • 大島紬
    • 奄美群島の伝統的な織物「大島紬」の「泥染め」は奄美の伝統的な染め。里山から切り出してきたシャリンバイをチップにし、その煮汁で最初の染めを行う。









      シャリンバイのチップの煮汁で染めた絹糸を泥で洗い、深い黒色に染める。泥染め用の小さな池を泥田(どろた)と言い、水生生物の重要な生息・生育地となっている。
      泥で染めた糸は土地独特の柄に織り上げられ、大島紬と呼ばれる着物になる。伝統的な柄には奄美の自然をモチーフとしたウミガメやソテツを意匠した柄がある。






  • 鍾乳洞
    • 鍾乳洞が発達する「低島」では、かつては鍾乳洞の底の水を利用していた。民俗学的にも重要な場所であり、また洞穴性の生物の生息地としても重要である。








  • サンゴ
    • 奄美群島は毎年多くの台風に見舞われる。サンゴを切り出して作った石垣は丈夫で、台風にも強い。この石垣を組む職人もいるほどである。





  • ソテツ
    • IUCN レッドリスト掲載種のソテツは、古くから人々に利用されてきた。実を調味料(味噌)や餅に加工したり、防風林として利用することがある

 

 

 

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◆ 奄美群島の生物多様性の国際的評価

国際的希少種や固有種の生息・生育地であること、種多様性に富むサンゴ礁生態系が見られることから、生物多様性保全上の重要な地域として世界的に評価されている。また、奄美群島を含む南西諸島は、ウミガメ類・海鳥類の繁殖地、渡り鳥の中継地など、広域を移動する種群を維持する上でも重要な地域である。

  • 奄美群島の生物多様性の国際的評価事例

    1. コンサーベーション・インターナショナル “生物多様性ホットスポット”
      日本列島がホットスポットに選定され、その中で特に、絶滅のおそれがある固有属のアマミノクロウサギ、ケナガネズミの生息地として、奄美群島を評価している。また、日本列島は爬虫類・両生類の固有性が高いが、特に奄美群島を含む南西諸島は、在来種における固有種の割合が、爬虫類で約85%、両生類で約77%と高い。絶滅が危惧される重要な種としてクロイワトカゲモドキを挙げている。
      URL:http://www.biodiversityhotspots.org/xp/Hotspots/

    2. バードライフ・インターナショナル “重要野鳥生息地”
      世界的に絶滅が危惧される種、または全世界で保護の必要がある種 としてルリカケス(固有)、オオトラツグミ(固有)、アマミヤマシギ(固有)が挙げられており、奄美群島はこれらが定期的・恒常的に多数生息している生息地として選定されている。また、生息地域限定種(Restricted-range species )として上記3 種に加え、リュウキュウコノハズク、カラスバト、ズアカアオバト、リュウキュウサンショウクイ、アカヒゲの8 種が、相当数生息する地域として選定している。
      URL:http://www.birdlife.org/action/science/sites/index.html

    3. 世界自然保護基金 “エコリージョン グローバル200”
      奄美群島を含む、南西諸島の「森林生態系(エコリージョン32)」と「沿岸生態系(エコリージョン217)」が選定されている。
      1. 森林生態系
        亜熱帯の島嶼群で見られる固有性の特異的な事例として、亜熱帯林とそこに生息・生育する、多数の固有植物種、固有鳥類が評価されている。世界的にこの地域だけに生息する遺存固有種として、アマミノクロウサギを挙げている。

      2. 沿岸生態系
        極めて孤立しており、特異な種の進化を可能にする地域として選定している。この地域のサンゴ礁の多様性は、多くの固有魚類や海鳥、海獣類の個体群を支えている、と評価している。
        URL:http://worldwildlife.org/science/ecoregions/g200.cfm





    4. コンサーベーション・インターナショナル“サンゴ礁ホットスポット 世界上位10海域ファクトシート”
      世界で最も種多様性に富むサンゴ礁が見られる、として奄美群島を含む「日本南部・台湾・中国南部のサンゴ礁」を選定している。
      URL:http://www.conservation.org/xp/news/press_releases/2002/021402a.xml

 

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